男がクルマをおりるとき

週末、母親に頼まれて父親をなばなの里ウインターイルミネーションを見に連れて行ってきた。

今年の春から物忘れ外来に通い始めた78才の父親が大好きなクルマを手放しクルマ人生の終焉をむかえた。

地方都市ではクルマは大切な生活手段だが、それ以前に彼にとっては大好きな趣味のツールでもあった。

早くに父親を亡くして、中学を卒業してからがんばって小さな事業を営んでいた彼にとってクルマは唯一の贅沢だった。

そんなわけでボクが物心着いたときには家にはクルマがあって、以来いろんなクルマに乗り換えてきたのを記憶している。

覚えている限りではクラウンを数台ほど乗り継いだあと、ロータリーのマツダ・サバンナ、縦目のメルセデス(確か300Eだったと思う)、ボルボの6気筒(264という珍しいグレード)、初代CIMA(これは強烈に速かった記憶が今でも残っている)。

極めつけはグリーンのメタリックのDimlerのダブルシックス、アイボリーのコノリーレザーのステキなクルマだった。

これで終われれば良かったが、いろいろあってこのクルマを買った価格の数分の1で手放して何故かルノーのルーテシアになった。

そのルーテシアもメンテナンス費用が馬鹿にならないということで、ホンダのライフの一番ベーシックなモデルに5年ほど前に乗り換えた。

そして先月医師からクルマに乗ることをやめるように宣告されクルマを手放した。

多くのクルマを乗り継いできた彼のカーライフはこのライフが終のクルマとなった。

父親の運転をみていてそろそろ引導を渡さなければと思っていたが、医師の宣告で彼はクルマをおりることとなったのだ。

そんなわけで実家に帰るときはこれからは4ドアのクルマで帰省し、まだ少しでも元気な内に見せてあげたいと母親に頼まれてなばなの里ウインナーイルミネーションに出かけた。

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土曜日の朝クルマとの生活が終わった父親をなばなの里まで助手席に乗せて高速道路を走った。

父親はボクのフランスの実用車をいいクルマだと褒めてくれた。

・エンジンがいい音をしているな(このクルマはBMWミニのクーバーと同じエンジンだ)。

・乗り心地がいいな(確かに国産の同クラスと比べて比較にならない乗り味だ)。

・シートがいいな(座面の柔らかさは昔のフランス車ほどではないがドイツ車ではありえない心地よさだ)。

シンプルで快適装備は国産車には及ばないが(カップホルダーすらない)、エンジンや足回りといったクルマの基本的な良さを彼は的確に評価してくれた。

決して昔からスピードを出して走ることはなかったけど、50年以上クルマと共に過ごしてきただけあってクルマ好きなんだなとあらためて思った。

そんな父親にポルシェ964カブリオレに乗せてあげれなかったことを今更ながらに後悔している。

助手席の彼がポルシェを見ると「いいデザインだ」「さすがポルシェいい音だな」とつぶやく。

クルマ好きにとっていくつになってもポルシェは特別なんだろう。

ポルシェで実家に帰ることがなく(実は買ったことすら言っていなかった)、結果として一度も乗せてあげれなかった。

そんな父親への想いと共に「いつまで元気に運転をすることができるのだろうか?」と自問した。

最後クルマをおりるときにはいいクルマ人生だったなと思い残すことがないようボクも精一杯カーライフを楽しもうと思った。

 

 


6 コメント
  1. 2014年11月17日
    • 2014年11月17日
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    • 2014年11月18日
  3. 2014年11月17日
    • 2014年11月18日

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